2012年12月21日金曜日

「アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団」のリアリティはこだわりと効率化から生まれた。「Autodesk Desi

 6月1日,柧┒寄冥情_催されたデザイナー向けのイベント「Autodesk Design Innovation Forum 2010」。このイベントでは,オートデスクの3Dグラフィックスツールを用いた最新事例が紹介され,その中でPlayStation 3用アクションアドベンチャー「」(以下,アンチャーテッド)の,キャラクターのモデリングに関するセッションも行われた。



Naughty Dog Lead Character Technical DirectorのJudd Simantov氏  登壇したのは,Naughty DogでLead Character Technical Directorを務めるJudd Simantov氏。アンチャーテッドのキャラクターは,主にオートデスクの「Maya」と「Mudbox」を使ってモデリングされているが,効率化を図るため,さらに自社で開発した専用のツールが使われているという。
 会場では,各キャラクターの骨格モデルと設定の共有,右半身を調整すると左半身にも同様の処理が自動的に施される機能,視点距離に応じてポリゴン数が増減し処理の負荷を抑える「Level of Details」(LOD)などが紹介された。そうした事前の効率化を徹底したうえで,キャラクターごとに顔や表情などを作り込み,個性とリアリティを与えていくわけである。


 さらにSimantov氏は,それらの過程を逐次履歴しておき,急な調整が必要になっても即座に復元できる「History Tools」の重要性も指摘。加えて,FK(フォワードキネマティクス)とIK(インバースキネマティクス,逆運動学)をブレンドし,より映像的な動きを表現する「IK Arm Context」も紹介された。
 また現在研究開発中のものとして,筋肉とそれに付随する関節を,よりリアルに表現するツールや,MAYA上に直接アイデアスケッチを描き込んだり,簡易3Dアニメを作ったりすることができるツールも紹介された。


 なおでは,今回のセッションに先駆けてSimantov氏にインタビューを行った。以下に掲載する内容から,Simantov氏がゲームを手がけるにあたり,ストーリーや人間性の表現をもっとも重視していること,またセッションで紹介したリアリティの追求や作業の効率化などは,ゲーム全体の伽蚋撙幛毪郡幛问侄韦茸饯à皮い毪长趣iみ取れるのではないだろうか。


「MAYA」「Mudbox」と社内ツールを併用しリアリティのある映像を追求

 アンチャーテッドシリーズは,映画のようなゲームとして非常に評価が高いですが,実際にプレイヤーが操作するシーンとカットシーンを組み合わせていく中で,注力した点などを教えてください。

Judd Simantov氏:
 もっとも難しかったのは,ゲームプレイからシネマティックなカットシーンに移行する間に,プレイヤーが醒めてしまわないようにする配慮です。そこで,In Game Cinematics」(IGC)により,カットシーンであっても,プレイヤーはただ見ているだけでなく何かしらコントロールができるようにしています。


 そうすると,プレイヤーが想定外の行動を取ることもあると思うのですが。

Judd Simantov氏:
 そこはIGCによって,プレイヤーの行動に制限が課せられます。例えば,シーンによっては歩くことしかできなかったりします。
 またIGCをどこに挟み込むかは,シナリオの内容から判断しています。したがってオープンな内容であれば,プレイヤーの制限は少なくして,できるだけ自由に行動できるようにしています。


 キャラクターのモデリングには,主にオートデスクの製品を使っているのですか?

Judd Simantov氏:
 オートデスク製品ではMAYAとMudboxですね。そのほか,社内で開発した専用ツールを多用します。その中には,MAYA上で使う自社ツールもあります。さらに他社製品も使いますから,かなりの種類のツールを使って作業しています。


 キャラクターの動きには,HumanIKを使っているのですか?

Judd Simantov氏:
 それは自社ツールでやっています。アンチャーテッドはアニメーションを志向しているので,ランタイムのIKツールは使わないのです。


 それは失礼しました。Autodeskさんのカンファレンスでしたので,てっきりそちらも使われているのかと思っていました。最新版のHumanIKでないと,手足以外の接点を設けられないということでしたので,よじ登ったりするシーンも多いアンチャーテッドで,どうやっていたのかなと不思議に思っていたんですよ。

Judd Simantov氏:
 そうしたシーンをHumanIKを使って作っているデベロッパも実際にありますから,決して難しいということはないでしょう。ただNaughty Dogでは,社内の専用ツールを使って同じような作業をしているわけです。



 当然ですが,モーションキャプチャーを多用していますよね。しかし,確か,指先まではキャプチャーしていないということだったと思うのですが。

Judd Simantov氏:
 ええ。顔と指先は入れません。そこは手作業で行うのですが,MAYA上の自社ツールを使うことでアニメーションを加えています。


 というと,モーションキャプチャーにはかなり手を加えているのですか?

Judd Simantov氏:
 カットシーンでは,ほぼそのまま使っています。しかしゲーム中では,ある状態から何か一つの動作をさせた場合,必ず元の状態に戻るようにループさせなければなりません。そういった意味で,かなり手を加えていますね。
 またモーションキャプチャーツールは,前作(編注:)の時点でかなり大規模なものをMAYA上に構築しています。したがって今回は,モーションビルダーなどを使わず,MAYAと自社ツールだけで制作しています。


 つまり今回は,前作よりも開発期間が短くなったわけですか。

Judd Simantov氏:
 実は,ゲームそのものの開発期間は,ほぼ変わりません。
 ただ前作のときは,ゲーム開発に入る前に,ツールの研究開発期間が1年ほどありましたから,そのぶん長くなっています。


 本作の中で,とくにオススメのシーンはありますか?

Judd Simantov氏:
 いろいろありますが,代表的なものは列車に乗り込むシーンでしょうね。通常,こうしたシーンでは列車を動かさず,周囲を動かすんです。しかし今回はあえて,列車を動かすことに挑戦しました。業界初の試みとまでは言いませんが,かなり珍しいケースだと捉えています。


 列車を動かすことにこだわった理由はなんでしょう?

Judd Simantov氏:
 例えば列車の中で,プレイヤーが進行方向を向いているとしましょう。そこで仮に,進行方向に手榴弾を投げたとしても,当然周囲は動いていますから,実際には後ろに飛んでいくという事態が発生します。リアリティを追求するために,そういったことも物理的に正しく表現したかったんです。


 そうしたこだわりをもって開発されたアンチャーテッドは,Metascoreからも読み取れるとおり,世界で非常に高い評価を受けていますね。

Judd Simantov氏:
 大きな業績を達成できたと捉えています。
 我々開発者は,ゲーム開発中に「これは優れたゲームになる」という手応えを感じることがあるのですが,IXA RMT,それが発売されて世間に評価されるかどうかまでは分からないんです。今回は,実際に高い評価を得ることができましたので,非常に報われた思いですね。



感情移入できる魅力的なストーリーでプレイヤーに感動を。グラフィックスはそれを支える重要な存在

 アンチャーテッドは,ドラクエ10 RMT,映画的とはいってもアクション要素が強いですよね。やはりアクション映画がお好きなんですか?

Judd Simantov氏:
 むしろ,人間を描いたドラマが好きですね。人と人との関係が発展していくようなストーリーとか。
 アンチャーテッドでも,アクションだけでなくキャラクターの関係や変化を描いています。私個人としては,カメラマンのジェフが登場するシーンに思い入れがあります。怪我をしたジェフを運ぶシーンがあるのですが,“自分の命を賭けて友の命を救う”という人間的な表現を試みています。


 映像表現とストーリーにこだわったゲームといえば,最近では「」や「」の評価も高いですよね。こうした傾向をどう思いますか?

Judd Simantov氏:
 良いことだと思います。きちんとしたストーリーを伝えることによって,プレイヤーの感情を動かすことは重要です。
 もちろん遊んで面白いということも重要なのですが,登場人物に感情移入できたり,ストーリー自体に魅力があって“旅”をしているような感覚になったりできれば,なお楽しいでしょう。


 とはいえ,そういった要素をすべて実現するのは大変じゃないですか?

Judd Simantov氏:
 もちろん大変なことが多いです。やはりゲームとして要求される部分がありますから,映画とはまた違った難しさがあります。
 その中でもグラフィックスは重要な地位を占めています。リアリティのある優れたグラフィックスは,プレイヤーに違和感を与えずにゲーム内に入り込ませ,キャラクターに感情移入させることができます。加えてストーリーも作り込まなければなりませんから,作業的には本当に大変ですね。人的にもコスト的にも莫大な量のリソースが要求されます。


 それでもチャレンジを続けていくわけですよね?

Judd Simantov氏:
 ええ。常に自分達の作ったものを検証し,現状に満足せず「次はよりベターに」という姿勢を忘れないようにしています。



 ところで,そろそろ次回作の話も出てきそうですが。

Judd Simantov氏:
 うーん,何か噂があるのかもしれませんが,私からは何もお話できない状態です。時が来たら,きちんと発表しますよ。


 それでは将来的に挑戦してみたいことはありますか?

Judd Simantov氏:
 Naughty Dogのプロジェクトであれば,何でもやりたいです。というのは,Naughty Dogなら限界を設けずに,どんどんチャレンジできるからです。また,ストーリーをしっかり作り込んでいるところも気に入っています。


 最後に,日本のゲームプレイヤーにメッセージをお願いします。

Judd Simantov氏:
 ゲーム開発においては,開発者の意見だけでなく,プレイヤーの意見も重要になります。開発者は常にプレイヤーのみなさんのお話に耳を傾けていますので,さまざまな意見や要望を聞かせてください。


 ありがとうございました。
関連トピック記事:

0 件のコメント:

コメントを投稿